京都教育大学附属京都小中学校 (京都府)
都道府県名
研究開発課題
(1)義務教育9年間で育てるべき資質・能力の検討と改善
(2)発達の段階に応じた各教科における学習の目標と内容の検討及び再構築
研究の概要
生徒たちが生きていく社会に目を向けると、世界情勢の急激な変化、日常生活の IoT 化や人工知能やロボットの普及、エネルギー問題や環境問題など、即座に対応しなければならない課題が山積みになっている。具体的には、一昨年から感染拡大が続く新型コロナウイルスの世界規模のパンデミック、世界各地で起こっている考え方の違いによる対立や紛争、カーボンニュートラルを目指した世界的な動き、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals )を掲げた社会の生活様式の変化など、近々の課題が山積している。
このような社会構造の急激な変化の中で、「私たちの社会を変革し、私たちの未来を作り上げていくためのコンピテンシーが、子供たちが生活のあらゆる側面において積極的な役割を担っていくためには、様々なコンテクストを超えて、不確実性の中を歩んでいくことが必要である。そのコンテクストは、時間軸(過去、現在、未来)であったり、社会的な空間(家族、コミュニティ、地域、国、世界)であったり、デジタルの空間であったりする。同時に、その脆さや複雑さ、価値を尊重しながらも、自然界と共存していくことが求められるだろう。(OECD Education 2030)」と提言している。
さらに、OECD が DeSeCo(「コンピテンシーの定義と選択))プロジェクトにおいて定義したキー・コンピテンシーに立脚して、Education 2030 プロジェクトでは、さらに、3 つのコンピテンシーのカテゴリーを、「変革を起こす力のあるコンピテンシー」として特定したが、これらは、若者が革新的で、責任があり、自覚的であるべきという強まりつつあるニーズに対応するものである。生徒たちは解決困難な課題と向き合わなければならないことが現実であり、この現実を生き抜くために必要な資質・能力を身につけ、解決困難な課題と向き合い解決していくことができる人材が社会から求められている。
一方、本校生徒に目を向けると、教師の目線・教師の肌感覚ではあるが、2020 年の全教員に対する学校 SWOT 分析において、多くの教員から「友達と協力しながら、楽しく活動できる」という生徒の姿が指摘されたことから、仲間と協働的に活動できる素地を持ち合わせていることがわかる。つまり、素直で前向きに物事に取り組んだり仲間と協力して課題を解決したりすることはでき、課題解決能力とその素地は持ち合わせていると思われる。しかしながら、2019 年の 9 年生 86 名に対する学力推移調査(ベネッセ)において、「教科の学習で一番やりがいを感じるとき」について、「身につけた知識が将来役に立つと思うとき:4.7%」、「学習内容が身についていると思うとき:15.1%」、「成績が伸びているとき:47.7%」、「おもしろい、楽しいと思うとき:25.6%」、「やりがいを感じることはない:7.0%」と答えた。このことから、教科の学習に対する生徒の意識が目先の成績や楽しさだけに向いていて、本来身につけるべき資質・能力に意識が向いていないことがわかる。したがって、現実社会にある課題を自分事として捉え、課題を解決するために自ら考えて行動にしたり粘り強くやり抜いたりしていこうとする力が足りない生徒が多いように感じる。
しかしながら、実社会に存在する課題と隔離された学習環境や生活環境で、生徒たちが過ごすことは好ましくないのではないだろうか。義務教育段階からこれらの課題と向き合う機会を設けることは、生徒たちが課題を自らの力で解決し乗り越えていく力(生き抜く力)を養うために必要不可欠なことであると考える。そこで本校では、自主・自立・自治の精神のもと、「未来の社会に躍動する生徒」の育成を本校で育てたい生徒像とし、解決困難な課題に直面しようともあきらめることなく、解決を目指して乗り越えることができる生徒を育成したいと考える。